アプリケーションの UI スレッドが 5 秒を超えて応答しない場合は、アプリケーション応答なし(ANR)エラーがトリガーされます。ANR とその診断の詳細については、Android のドキュメントをご覧ください。
また、問題のあるスレッドの特定には Crashlytics が役立ちます。Google は ANR を分析し、該当するスレッドにタグを付けて、Crashlytics ダッシュボードで ANR のデバッグに関するヒントを提供します。
このページの以降のセクションでは、ANR の各タグの意味について説明し、タグが含まれる ANR の例を示し、ANR をデバッグする際に推奨される解決方法を紹介します。
Triggered ANR
長時間ブロックされて ANR をトリガーしたスレッドには、この Triggered ANR
タグが付けられます。
問題のあるスレッドは、アプリのメインスレッドの場合もあれば、応答していないと判断された他のスレッドの場合もあります。ただし、Triggered ANR
とタグ付けされたスレッドが ANR の実際の原因である場合と、そうではない場合があります。ANR のデバッグと修正を行うための分析情報を提供するために、Crashlytics は ANR に関連する他のスレッドにもタグを付けます。このページの以降のセクションでは、スレッドに付けられる可能性がある他のタグについて説明します。
Deadlocked
ANR の原因となったデッドロックに関連していると判断されたスレッドには、この Deadlocked
タグが付けられます。
スレッド 1 が、スレッド 2 によって保持されているリソースが必要であるため待機状態に入り、スレッド 2 も、スレッド 1 によって保持されているリソースが必要であるため待機状態に入ると、デッドロックが発生します。アプリのメインスレッドがこの状況になった場合は、おそらく ANR が発生します。
例を表示
デッドロックに関連している 2 つのスレッドの例を示します。
main (unknown): tid=1 systid=1568
com.android.server.pm.PackageManagerService$PackageManagerInternalImpl.getPackage(PackageManagerService.java:22701)
com.android.server.pm.PackageManagerService$PackageManagerInternalImpl.filterOnlySystemPackages(PackageManagerService.java:22787)
...
com.android.server.SystemServer.main(SystemServer.java:368)
java.lang.reflect.Method.invoke(Native method)
com.android.internal.os.RuntimeInit$MethodAndArgsCaller.run(RuntimeInit.java:517)
com.android.internal.os.ZygoteInit.main(ZygoteInit.java:934)
ActivityManager (unknown): tid=21 systid=1902
com.android.server.pm.PackageManagerService.getPackageSetting(PackageManagerService.java:23618)
com.android.server.pm.PackageManagerService.getPackageUid(PackageManagerService.java:4542)
...
android.os.Handler.handleCallback(Handler.java:907)
android.os.Handler.dispatchMessage(Handler.java:99)
android.os.Looper.loop(Looper.java:216)
android.os.HandlerThread.run(HandlerThread.java:67)
com.android.server.ServiceThread.run(ServiceThread.java:44)
推奨事項
デッドロックに関連しているスレッドを調べて、それらのスレッドによって取得されたリソース / ロックを確認してください。有効な解決策については、デッドロックとデッドロック防止アルゴリズムをご覧ください。
IO Root blocking
低速な I/O オペレーションを実行してして、Triggered ANR
のスレッドをブロックしたスレッドには、IO Root blocking
タグが付けられます。Triggered ANR
のスレッドが他のスレッドによってブロックされていない場合、IO Root blocking
のスレッドは Root blocking
のスレッドでもあります。
例を表示
Thread main(THREAD_STATE_TIMED_WAITING)
sun.misc.Unsafe.park( Unsafe.java:0 )
java.util.concurrent.locks.LockSupport.parkNanos( LockSupport.java:230 )
android.database.sqlite.SQLiteConnectionPool.waitForConnection( SQLiteConnectionPool.java:756 )
...
android.app.ActivityThread.main( ActivityThread.java:8192 )
Thread main(THREAD_STATE_NATIVE_WAITING)
Syscall
art::ConditionVariable::WaitHoldingLocks(art::Thread*)
art::GoToRunnable(art::Thread*)
art::JniMethodEnd(unsigned int, art::Thread*)
libcore.io.Linux.fdatasync( Linux.java:0 )
libcore.io.ForwardingOs.fdatasync( ForwardingOs.java:105 )
...
java.io.RandomAccessFile.write( RandomAccessFile.java:559 )
...
android.app.ActivityThread.main( ActivityThread.java:8192 )
推奨事項
一般的には、アプリのメインスレッドでは高負荷になる I/O オペレーションを実行しないでください。メインスレッドが IO Root blocking
になった場合は、StrictMode を使用することによって、メインスレッドで発生している意図しない I/O オペレーションを特定できます。
Root blocking
Triggered ANR
とタグ付けされたスレッドをブロックしたスレッドには、Root blocking
タグが付けられます。スレッドに Root blocking
と Triggered ANR
の両方のタグが付けられている場合、そのスレッドをブロックしている他のスレッドはありません。
Triggered ANR
のスレッドが他のスレッドを待機していた場合(それが過渡的であることもある)、待たせていたスレッドは Root blocking
になります。スレッドが ANR の根本原因になる理由としては、さまざまな事柄が考えられます。
例を表示
スレッドの状態に基づく例をいくつか示します。
Thread main(THREAD_STATE_RUNNABLE)
android.os.Parcel.createTypedArray( Parcel.java:3086 )
android.content.pm.PackageInfo.<init>( PackageInfo.java:546 )
...
android.app.ActivityThread$H.handleMessage( ActivityThread.java:2166 )
android.os.Handler.dispatchMessage( Handler.java:106 )
android.os.Looper.loop( Looper.java:246 )
android.app.ActivityThread.main( ActivityThread.java:8633 )
Thread main(THREAD_STATE_BLOCKED)
DBHelper.runOnDB( DBHelper.java:97 )
DBHelper.runDb( DBHelper.java:125 )
...
java.lang.reflect.Method.invoke( Method.java:0 )
EventBus.invokeSubscriber( EventBus.java:510 )
postToSubscription( EventBus.java:437 )
...
android.os.Handler.handleCallback( Handler.java:938 )
android.os.Handler.dispatchMessage( Handler.java:99 )
android.os.Looper.loop( Looper.java:268 )
android.app.ActivityThread.main( ActivityThread.java:7904 )
推奨事項
メインスレッドでは、CPU 使用率が高い処理を最小限に抑えてください。CPU 使用率が高いタスクの実行にはワーカー スレッド(バックグラウンド スレッド)を使用してください。
メインスレッドでは、データベースからの読み込みなど、I/O 負荷が高い処理を最小限に抑えてください。
Unknown root cause
あるスレッドが ANR をトリガーしたが、ANR の発生時にそのスレッドはプロセス内でアイドル状態であった場合、そのスレッドには Unknown root cause
タグが付けられます。Crashlytics には、この現象の根本原因を特定するための十分な情報がありません。この ANR が発生した明確な理由は不明です。
例を表示
Thread main(THREAD_STATE_NATIVE_WAITING) __epoll_pwait
android::Looper::pollInner(int)
android::Looper::pollOnce(int, int*, int*, void**)
android::android_os_MessageQueue_nativePollOnce(_JNIEnv*, _jobject*, long, int)
android.os.MessageQueue.nativePollOnce( MessageQueue.java:0 )
android.os.MessageQueue.next( MessageQueue.java:335 )
android.os.Looper.loop( Looper.java:193 )
android.app.ActivityThread.main( ActivityThread.java:8019 )
推奨事項
ANR を防止するための一般的なアドバイスに従ってください。たとえば、アプリのメインスレッドが 5 秒を超えてビジー状態になる可能性があるコードの場所を特定します。